◇
V、
A および
Σ の座標成分をすべてゼロと置きます。
◇ 2番目と3番目の式の右辺にある
Jx、
Jy、
Jz、および、
Kx、
Ky、
Kz に
Jx=
xB cos
Ωt−
yB sin
Ωt
Jy=
xB sin
Ωt+
yB cos
Ωt
Jz=0
Kx=
vBx cos
Ωt−
vBy sin
Ωt
Ky=
vBx sin
Ωt+
vBy cos
Ωt
Kz=0
((ロ) の例-6)
を代入します。
その結果、
〔 表 4-8 〕 の ((ロ) の例-7) に示すような 座標成分で表した位置、速度、加速度に関する相対運動の式が得られます。三つの式の右辺において最後の項にある 変換行列の[
I ]には、〔 表 4-7 〕の ((ロ) の例-5 ) を代入します。
〇 上記の ((ロ) の例-6) に示した
Jx、
Jy、
Jz、および、
Kx、
Ky、
Kz は、座標成分で表した相対運動の式において次の式で与えられたものです(
を参照 ):
Jx =
I11xB +
I12yB +
I13zB,
Jy =
I21xB +
I22yB +
I23zB,
Jz =
I31xB +
I32yB +
I33zB,
Kx =
I11vBx +
I12vBy +
I13vBz,
Ky =
I21vBx +
I22vBy +
I23vBz,
Kz =
I31vBx +
I32vBy +
I33vBz
これらの式において、右辺の変換行列の行列成分
Iij(ij = 1,2,3 )に〔 表 4-7 〕に示した ((ロ) の例-5 ) の行列成分を代入すれば、 ((ロ) の例-7 ) が得られます。
位置、速度加速度に関する ((ロ) の例-7 )を用いて、[ 図 4-8 ] に示す 物質粒子Q および 物質粒子C の相対運動を計算します。
物質粒子Q の運動:
[ 図 4-8 ] から、観察者Aが眺めた物質粒子Qの 位置の座標成分は、
xA = L + L2, yA = E, zA = H ((ロ) の例-8a )
となります。物質粒子Qの 速度と加速度の座標成分は、上記の ((ロ) の例-8a ) の時間
t に関する1階および2階の導関数で与えられ、それぞれ
vAx = dxA/dt = d(L + L2)/dt = dL2/dt = UQ,
vAy = dyA/dt = 0, vAz = dzA/dt = 0 ((ロ) の例-8b )
および
aAx = dvAx/dt = d 2(L +L2)/dt2 = d 2L2/dt2 = WQ,
aAy = dvAy/dt = 0, aAz = dvAz/dt = 0 ((ロ) の例-8c )
となります。ここに
UQ および WQ は、それぞれ、座標系Aの空間における 物質粒子Qの 速度成分 および 加速度成分 で、両者のあいだには
dUQ/dt = WQ
の関係があります。
((ロ) の例-8a )、((ロ) の例-8b )、((ロ) の例-8c ) の結果をまとめて示せば、次のようになります:
◇ 観察者A が眺めたとき
xA = L+L2, yA = E, zA = H
vAx = UQ, vAy = 0, vAz = 0 ( (ロ) の例-9 )
aAx = WQ, aAy = 0, aAz = 0
同じ物質粒子Qを観察者B が眺めたときの運動を求めるには、〔 表 4-8 〕の相対運動の式において、左辺の位置、速度、加速度の座標成分に上記の ((ロ) の例-9 ) を代入します。すると 観察者Bが眺めた物質粒子Qの位置、速度、加速度の座標成分について、次の結果が得られます:
◇ 観察者B が眺めたとき
xB = L2 cosΩt, yB = −L2 sinΩt, zB = H
vBx = UQ cosΩt−ΩL2 sinΩt, vBy = −UQ sinΩt−ΩL2 cosΩt,
vBz = 0 ( (ロ) の例-10 )
aBx = WQ cosΩt−Ω2L2 cosΩt−2ΩUQ sinΩt,
aBy = −WQ sinΩt+Ω2L2 sinΩt−2ΩUQ cosΩt, aBz = 0
観察者Aが眺めた ((ロ) の例-9 ) の運動は、観察者Bが眺めると ((ロ) の例-10 ) の運動として観察されます。その理由は、次のような図形的な考察からも理解することができます。
◇ 観察者Aが眺めたときの前図 [ 図 4-8 ] では、座標系Aの
xA軸と
yA軸が静止し、座標系Bの
xB軸と
yB軸が 角速度Ωで反時計まわり≠ノ回転しています。
◇ 同じ運動を観察者Bが眺めると、座標系Bの
xB軸と
yB軸が静止し、座標系Aの
xA軸 と
yA軸が 角速度
Ω で時計まわり≠ノ回転している運動として観察されます。これらの座標軸の 時刻
t における向きを、
[ 図 4-9 ] に示します。
◇ この図において、物質粒子Q は時刻
tのとき
xA軸の上の Q と記した位置にいます。
xA軸が回転すると、物質粒子Qには速度と加速度が生じます。図形的な考察を行うと、
e⊥と反対向き の「速度
ΩL2」が生じ、また
e‖ と反対向きの「向心加速度;
Ω 2L2」および
e⊥と反対向き の「コリオリの加速度;2
ΩUQ」が生じることが導かれます。それらを、図の 紫色 および ピンク色 の矢印ベクトルで示します。ここに
e‖ は
xA軸方向の単位ベクトルで、
e⊥ は
yA軸 方向の単位ベクトルです。
◇ [ 図 4-9 ] に記した物質粒子Q の位置、および、速度と加速度ベクトルの
xB軸 と
yB軸 への座標成分をとると、その結果は ((ロ) の例-10) と一致することが確かめられます。
物質粒子Q の時々刻々の位置、すなわち「軌道」を求めるためには、速度
UQ と 加速度
WQ がどんな時間の関数であるかを知る必要があります。ここでは
WQ がゼロのとき、したがって
UQ = 一定, WQ = 0 ((ロ) の例-11)
という簡単な場合をとり上げます。
dL2/
dt =
UQ であることから
L2 = UQt ((ロ) の例-12)
となります。ただし 初期時刻
t=0 で
UQ = 0 としました。
((ロ) の例-12) を ((ロ) の例-10) に代入すると、物質粒子Qの位置の座標成分
xB と
yB は次のようになります:
xB= UQt cosΩt,
yB= −UQt sinΩt
((ロ) の例-13)
ここで次の二つの時間;
TQ = S/UQ,
Trot =2π/Ω
((ロ) の例-14)
を導入します。ここに
{TQ;物質粒子Qが 一定の速度 UQ で床面に沿って原点から 半径S の距離を進むのに要する時間}
{Trot;座標軸xA が 回転軸のまわりに1回転するのに要する時間}
です。TQ と Trot を ((ロ) の例-13) に代入すると
xB/S = (t/TQ) cos {2π(TQ/Trot) (t/TQ) },
yB/S = −(t/TQ) sin {2π(TQ/Trot) (t/TQ) } ((ロ) の例-15)
となります。
無次元量の 時間 t/TQ と パラメータ TQ/Trot を与えて ((ロ) の例-15) の数値計算を行い、その結果を 横軸に xB/S をとり、縦軸に yB/S をとってグラフに表します。
◇ 一例として、パラメータを TQ/Trot = 1/8 に選び、時間変数を ゼロから TQ まで8等分した
t/TQ = 0, 1/8, 2/8, 3/8, 4/8, 5/8, 6/8, 7/8, 1
を与えます。これらを ((ロ) の例-15) に代入し、時々刻々の物質粒子Qの位置を座標 (xB/S,yB/S) として灰色の点で示すと、[ 図 4-10 ] のようになります。
物質粒子Qは xA軸 に沿って等速度 UQ で進みますが、この軸は回転軸の回りに 角速度Ω で回転するので、座標系Bの空間では、物質粒子Qの軌道は曲線になります。また同図には、原点から S の距離にある点(青色の丸)の座標系Bの空間における軌道も示しました。この点は座標系Aの空間では静止した点ですが、座標系Bの空間では、円軌道上を等速度で動く点になります。
物質粒子C の運動:
[ 図 4-8 ] から、観察者Aが眺めた物質粒子Cの 位置の座標成分は、
xA = L1, yA = E1, zA = H3−H1 ((ロ) の例-15a )
となります。物質粒子Cの 速度と加速度の座標成分は、上記の ((ロ) の例-15a ) の時間 t に関する1階および2階の導関数で与えられ、それぞれ
vAx = dxA/dt = d(L1)/dt = 0, vAy = dyA/dt = 0,
vAz = d(H3−H1)/dt = −d(H1)/dt = −UC ((ロ) の例-15b )
aAx = dvAx/dt = 0, aAy = dvAy/dt = 0,
aAz = dvAz/dt = −dUC/dt = −WC ((ロ) の例-15c )
となります。ここに UC および WC は、それぞれ、座標系Aの空間における 物質粒子Cの 速度成分 および 加速度成分 で、両者のあいだには
dUC/dt = WC
の関係があります。
((ロ) の例-15a )、((ロ) の例-15b )、((ロ) の例-15c ) の結果をまとめて示せば
◇ 観察者A が眺めたとき
xA = L1, yA = E1, zA = H3−H1
vAx = 0, vAy = 0, vAz = −UC ( (ロ) の例-16 )
aAx = 0, aAy = 0, aAz = −WC
となります。
同じ物質粒子Cを観察者B が眺めたときの運動を求めるには、〔 表 4-8 〕の相対運動の式において、左辺の位置、速度、加速度の座標成分に上記の ((ロ) の例-16 ) を代入します。すると 観察者Bが眺めた物質粒子Cの 位置、速度、加速度の座標成分 について、次の結果が得られます。すなわち
◇ 観察者B が眺めたとき
xB = S cosΩt, yB = −S sinΩt, zB = (H3−H )−H1
vBx = −ΩS sinΩt, vBy = −ΩS cosΩt, vBz = −UC ((ロ) の例-17 )
aBx = −Ω 2S cosΩt, aBy = −Ω 2S sinΩt, aBz = −WC
となります。ここに S = L1−L、すなわち 展望台の床面の半径 です。
観察者Bが眺めた 物質粒子C の速度 は、{ 回転軸のxA軸 に垂直な方向の速度 −Se⊥ } と { 鉛直下方を向いた速度 −UCkB } を加え合わせものです。また 物質粒子の加速度は、{ 回転軸のxA軸 に平行で原点の方向を向く加速度 −Ω 2S e‖ } と { 鉛直下方を向いた加速度 −WCkB } を加え合わせものです。これらの速度と加速度の xB軸方向、yB軸方向、zB軸方向の座標成分は、((ロ) の例-17) に一致することが確かめられます。
物質粒子C の時々刻々の位置、すなわち「軌道」を求めるためには、速度 UC と 加速度 WC がどんな時間の関数であるかを知る必要があります。この例では 物質粒子Cが [ 図 4-8 ] の D の位置から鉛直下方に落下する速度と加速度であり、地球の重力加速度の大きさを g (g = 9.80 [m/s2] ) とすれば
UC = gt, WC = (1/2)gt2 ((ロ) の例-18)
となります。ただし 初期時刻t=0 で UC = 0 としました。
物質粒子C の位置の座標成分は、((ロ) の例-17 ) の1行目の式で与えられます。ただし
dzB/dt = −dH1/dt = −UCt= −gt
の関係を用い、初期時刻t=0 で H1=0 であることを考慮すると
zB = −(H−H3)−(1/2)gt2
が得られます。したがって、物質粒子Cの位置の座標成分は
xB=S cosΩt, yB= −S sinΩt, zB = −(H−H3)−(1/2)gt2
((ロ) の例-19)
となります。
物質粒子Cが落下し始めてから地表面 zB = −H に到達するまでに要する時間を TC とすれば
TC=(2H3/g)1/2 ((ロ) の例-20)
となります。
ここで座標軸 xB が1回転するのに要する時間;
Trot =2π/Ω ((ロ) の例-21)
を導入し、((ロ) の例-19) を次のように書き直します:
xB/S = cos {2π(TC/Trot) (t/TC) }
yB/S = −sin {2π(TC/Trot) (t/TC) } ((ロ) の例-22)
zB/H = −1 + (H3/H) {1− (t/TC)2 }
((ロ) の例-22) は、二つの無次元のパラメータ;
TC/Trot および H3/H ((ロ) の例-23)
を有しています。
二つのパラメータ TC/Trot と H3/H を指定して、時間の変数 t/TC に次々に値を与えてゆくと、物質粒子の位置座標;
( xB/S, yB/S, zB/H )
は空間に軌道を作り上げてゆきます。
◇ 一例として、パラメータの値を
TQ/
Trot = 1/8、
H3/
H =0.6
に選び、時間の変数に 0 から 1 までを4等分;
t/
TQ = 0, 1/4, 2/4, 3/4, 1
します。
これらの時間変数を ((ロ) の例-22) に代入し、時々刻々の物質粒子Cの位置を 座標の (
xB/
S,
yB/
S,
zB/
H ) として灰色の点で示すと、
[ 図 4-11 ] のようになります。
座標系Aの空間では、物質粒子Cは
zB 軸 と 線分O
BT とで作られる鉛直面≠ノおいて、D から G に向かって鉛直下方に落下します(
[ 図 4-8 ] を参照 )。ところが座標系Bの空間でこの運動を眺めると、物質粒子Cは鉛直方向だけでなく水平方向にも移動して、図に示すような曲線の軌道を描くことが分かります。
このように、観察者Aは 物質粒子Q を水平方向に直線的に進む運動として観察しますが、観察者Bは [ 図 4-10 ] に示すような曲線的な軌道に沿った運動として観察します。同様に、観察者Aは 物質粒子C を鉛直下方に直線的に落下する運動として観察しますが、観察者Bは [ 図 4-11 ] に示すような曲線的な軌道に沿った運動として観察します。
同じ物質粒子が異なった運動として観察されるのは、観察者Bがいる座標系Bが 座標系Aの空間で 回転運動をしているからです。
〇 似た例として、遊園地にあるメリーゴーランドの回転する床面上に座っている観察者を挙げることができます。この観察者が眺めた周囲の諸物体の運動は、回転運動と組み合わさった運動となっています。
〇 メリーゴーランドの床面の回転と比べると、[ 図 4-8 ] に示した展望台の床面は実際には非常にゆっくりと回転します。採用した パラメータ TQ/Trot や TC/Trot の値は、実際に比べて相当に大きな値に選んであります。そのため [ 図 4-10 ] や [ 図 4-11 ] に示した曲線は、かなり誇張したものになっています。実際には、これらの曲線はきわめて直線に近いものであると予想されます。